着物姿は美しい。着物は日本の伝統文化だ。多くの人が感じ、理解している。だが、日本の現代風景の中に、着物姿を目にする機会は少ない。
伝統文化とは、時代の変化にも揺るがない大衆の支持と、変化をも取り入れる柔軟さがあってこそ生き残るものだろう。大衆の日常から遠ざかる伝統文化は、もはや絶滅危惧種だ。残念ながら、着物文化も例外ではない。
染色作家・蒼城は、伝統の技法とオリジナルの染色技法を駆使し、古典に限らず現代的な要素を着物に取り入れ続けている。ロックミュージシャンでもある彼には、伝統を常に斬新に進化させていくエネルギーがある。
また、着物制作における全ての過程を分業せずに独りで行う、彼の類まれな技能は、注文者のデザインイメージをぶれることなく貫徹させる。
柔軟且つ、研鑽を惜しまない謙虚な姿勢は、着物の「敷居(しきい)」を取り払い、多くの人が音楽のように自由に着物を楽しめる日常を、確実に拓きつつある。
|
茂木蒼城
日本の染色作家※、ミュージシャン。
1953年、染色作家・茂木竹雄(もてぎたけお)の長男として、東京日野市に生まれる。幼少の頃から、父の指導で絵画や染色技法を学ぶ。
1980年、銀座松崎ギャラリーで、父・竹雄と個展を開く。
1982年、KITTY(現ユニバーサルミュージック)よりメジャーデビュー。
1984年、活動を染色のみに絞る。
自宅工房に蒸し釜を有し、デッサン、デザインから染色、仮縫いまでを一人でこなす、現代の着物業界において希少な人物。 独自に生み出した「溜描(ためがき)」技法と、日本画、洋画、伝統的染色の多種の技と、多彩な色を用いて、「蒼城染」を確立。オリジナル着物を求める着物ユーザーに特に人気が高い。
ミュージシャンとしては、デビュー当時の仲間のサポートメンバーの一員として、染色家活動の傍ら、不定期ながらライブ活動も行っている。
※染色作家:主に着物制作において、全ての工程を一人で手掛ける職人(または芸術家)。
|